2014年01月12日

新米先生の涙

ある高校で講演後に、一つのクラスからのフォロアップ講義の依頼がありました。
依頼したのはそのクラスの担任で今年先生になったばかりの方です。

先生自身もクラスをどのように良くしていけばいいのか、きっと苦悩していたのでしょう。
打ち合わせで初めて会った時の表情にはそれが少なからず読み取れるようでした。

 一通り先生が感じているクラスの課題をおうかがいし、その上で私は「7つの習慣」を基盤とした『人生を成功に導く』価値観についての講義を行うことにしました。

 存在する問題に焦点を当てるのではなく、普遍的な人としての価値観に焦点をあてて、生徒に自らの生き方を考えさせようというのが狙いでした。
 どんな暗闇にも光をあてればそれはなくなります。人の課題や欠点も同じで良いところを引き出すことができれば、課題も自然と克服していることになるのです。

 実際の講義をはじめると、子供たちの表情から確かにクラスへの満足度の低さ、そしてどこに向かっていけばいいのかつかめないもどかしさから来るエネルギーの滞りを感じました。

 そんな中でも、心優しい生徒らは私を暖かく迎え入れ講義も順調に進んで行きました。

 しかし、私は内容を盛りだくさんで用意してしまい、講義内容を最後まで伝えることができませんでした。しっかりとしたまとめができないまま終わりの時間がきてしまったのです。

 授業の終わりを告げる鐘が鳴り続けていました。
 その締めをするために担任であるその1年目の先生が教室の前へ歩み出ました。

 その時、思いもつかない事態が起きました。

 その先生は、「今日の学習をみんなにしてもらって本当に良かった」と言葉を出しながら突然、涙をこぼしたのです。その後は泣きながら私への謝意を伝えました。
 先生が涙を流したその瞬間、生徒たちの視線は先生へ釘付けとなりました。彼らの先生を見る眼差しは真剣で温かみのあるものだったように思います。

 その涙が導いたこの瞬間の雰囲気こそがこのクラスに一番必要なものだったと思います。
 先生の人間味を、先生の苦悩を、そして何よりも先生の自分らへの「愛」を生徒たちは感じたのではないでしょうか。

 私が車で学校を去るとき、先生は礼儀正しくそして爽やかな笑顔で見送ってくれました。
 12月だというのに暖かな日差し。そして爽やかに吹く風があまりにも先生とマッチしていました。



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Posted by 比嘉正央 at 00:16│Comments(0)先生のひとりゴト
 
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