2018年07月14日

彼女の仕事

彼女の仕事

南インドの4月の暑さは、そこに居るだけで体力を奪っていく。訪れた小さな村の路上で観光客に声をかけ何かを売っている女性がいる。インド人のセールスは誰もが強気に高く売りつけようとするが、彼女はどこか遠慮がちでこの街には似合わない雰囲気があった。さり気なく彼女のそばを通り抜けようと、彼女の横顔を覗いたときに「ハッ」とした。その顔つきと指先のなくなっている手から彼女が「ハンセン病者」であることがわかった。側により売っている商品を見るとそれは伝説的なインド聖者の写真だった。「10ルピー(18円)」と彼女は言った。多めに20ルピー払って一枚頂こうとすると、彼女は戸惑った様子でもう一枚を手の表面を使って抜き出し、私に差し出した。そんな彼女の仕草が私にはとても健気に写った。 日本で想像を絶する差別にあったハンセン病。数十年も前に治癒する病になったにもかかわらず偏見や差別は今でも続く。ましてや途上国において、私があった多くのハンセン病者は路上で物乞いをしていた。かつて日本でもうそうであったように・・
 翌日同じ場所に彼女はいた。同じ写真を10枚購入すると薄い紙の写真をなぞるように丁寧に10枚抜き出す彼女。「写真を撮ろう」と言うと自分の顔を指差し、「写真はいや」と遠慮した。私の顔を真っ直ぐに見てそういう彼女に、生き抜いてきた強さを観た。
 「決して人を傷つけず、いつでも助けなさい」。聖者の写真にはその言葉が書かれていた。


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Posted by 比嘉正央 at 20:09│Comments(0)先生のひとりゴト
 
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