母への授業
母への授業
母が入院して早一か月。
87を迎えた母の体力の低下は著しく、数か月前までは何でも自分でこなしていたのですが、一気に衰えた感じです。
しかし、母を苦しめるのは体のことよりも心のほうかもしれません。
先日、病床からかかってきた電話では「どうしようもなく苦しい、すぐにきてほしい」というものでした。心の苦しみから解放されたいと安楽死さえ望んでくるのです。
落ち着いた頃を見計らって私は母に「永遠の命」について話しました。
肉体の死がすべての終わりではない、魂は永遠であるという主旨の話です。
以前は、「そんなまやかしは信じない」と突っぱねていた母でしたが、この日は落ち着いて耳を傾けてくるようでした。
葬儀の持ち方、お墓のことについて一通り希望を聞いた後、天に旅立つ前にすべき人の課題について話を切り出しました。
母が抱えている課題は不安、恐れ、憎しみからの解放です。それが彼女の心を強く縛り、苦しめているのです。
すべてはうまくいっていること、許しこそが今世の課題である。肉体の死後にある世界があり、先に亡くなった親やきょうだいも祝福していることを話しました。
母の顔が少しずつ穏やかになっていくのが感じられました。
すると母は「聖書でも7回人を許しなさい」と言っている、と2度その言葉を繰り返しました。
それを語る母の声はあまりにもピュアで、それはまるで10代の少女のような声でした。
そしてそれは、私と母のこれまでの会話の中で、最も意味ある会話になったと思います。
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